【第79回】「野球肘」について(その1)【2017年5月】

 「野球肘」は名前のごとく、野球などの投球動作によるオーバーユース(使い過ぎ)で発症します。成長期に軟骨、骨が障害を受けると、将来の「変形性関節症」につながります。内側型と外側型が多く、後方が痛くなる後方型も見られます。内側型は内側のけん引力によって、筋肉や内側側副靭帯(じんたい)の微細な損傷が起き、重傷になれば剝離骨折を生じます。外側型は外側部に圧迫力が加わり、微細骨折、骨軟骨の剝離(離断性骨軟骨炎)を生じます。後方型は伸展位で肘頭(ちゅうとう)にけん引力がかかり、疲労骨折になる場合があります。
 発症した子どもさんに投球数を聞くと、ほとんどが投げ過ぎです。日本臨床スポーツ医学会では、小学生の全力投球は1日50球、週200球以内に制限するよう提言しています。また、年間70試合を超えると野球肘の発生頻度が上昇するとの報告もありますが、1日50球以下の投球で発生した症例もあるので絶対安全とはいえません。指導者、親の心配りが必要と考えます。次回は診断、治療についてお話しします。