【第59回】「肩が上がらない」【2015年9月】

今回は「肩が上がらない」疾患についてお話しします。最も多いのは俗に言う四十肩の「肩関節周囲炎」です。特徴は痛みで上がらないことが多く、我慢すれば自力で上がることがほとんどです。それに対して「腱板(けんばん)損傷」は、肩を上げるための腱板が切れるので自力で上がらないことが多いですが、これも痛みを伴います。
 また、頸椎(けいつい)由来で上がらないこともあります。「頸椎椎間板ヘルニア」や「頸髄症」で筋力が低下する場合です。多くは上肢のしびれ、痛みを伴いますが、「解離性運動まひ」という疾患では、全く痛みやしびれを伴わず、本当に肩が上がらないだけです。原因は脊髄から出る神経根前根だけが圧迫されるためで、治療は頸椎の安静や、脊髄周辺の血流を良くする内服薬を服用します。多くの方は1、2カ月で改善し肩が上がるようになりますが、改善しない場合は手術が必要なときもあります。痛みがないため、すぐに病院に行かない方も多く見られますが、治療が遅ければ回復に時間がかかるため、早めの受診を勧めます。