【第96回】「膝後十字靭帯損傷(断裂)」について【2018年10月】

今回は、膝の「後十字靭帯(じんたい)(PCL)損傷」についてお話しします。前回の前十字靭帯 (ACL)損傷がスポーツ選手など比較的若い世代に発生するのに対し、PCL損傷は高齢になっても損傷することが多く、むしろ高齢者の方が多い傾向があります。
  PCLは脛骨(けいこつ)が後方へ移動するのを制御する靭帯で、膝下に前方から力が加わると切れます。すなわち、膝からこけるような転倒が、最も多い受傷起点です。ただPCLは膝の後方の関節包に接しており、血流を受けやすいため、ACLと違って周辺の組織に癒着して治ることが多いのです。従って手術する人は少ないですが、靭帯が強度的にしっかりするまでは専用の装具を装着することが必要です。PCL損傷はACL損傷と違って膝の不安定性が分かりにくく、自覚されない方も多いのですが、膝をぶつけてなんか変だなと感じたら早めの受診をお勧めします。