【第84回】「デ・ケルバン病」について【2017年10月】

今回は、腱鞘炎の一つである「デ・ケルバン病」についてお話しします。腱鞘炎といえば、親指の付け根に発症し、指が引っ掛かる「ばね指」が有名ですが、「デ・ケルバン病」は親指を伸ばす「短母指伸筋腱」と親指を広げる「長母指伸筋腱」が手関節の腱鞘(トンネル)で炎症を起こすものです。
 女性に多いのですが、特に授乳中の方に多く発生することがあります。赤ちゃんの頭を支える母指の動きが原因と思われますが、授乳中なので通常行う、投薬、ステロイドの腱鞘内注射はできません。症状の強い場合は手術になりますが、子育てで忙しく、それもまず困難です。「授乳が終われば薬が使えるのでまた来てくださいね」とお話ししますが、授乳が終了すると皆さん治るようで、実際のところ授乳後に治療が必要になる方はごくまれです。
 しかし、一般の方では薬が使えますので、あまり我慢をせず受診することをお勧めします。炎症がひどくなると、手術しても痛みが消失するのに時間がかかることがあるからです。